冷たい上司の温め方
楠さんが注文したのは、チーズインハンバーグだった。
なんだか意外。
もっと大人っぽいものを頼むと思っていたのに。
お酒がダメだとか……見た目とは違って、子供っぽい。
それにしても……楠さんとなにを話したらいいのだろう。
元々無口な彼は、特に口を開くこともない。
「あのー」
「なんだ」
「ハンバーグ、好きなんですか?」
自分でもつまらない質問だと思った。
だけど、プライベートについてなにも知らない楠さんと、会話を膨らませる技術なんて持ちあわせてはいない。
「そうだ。子供みたいだと言いたげだな」
「いえっ、そんなこと、ないです」
まずい。
怒らせてしまっただろうか。
「まあ、いい。他にはカレーも好きだし、唐揚げも好きだ」
「えっ?」
思わぬ告白に、拍子抜けする。