冷たい上司の温め方
私の提案で、ブラネタリウムへ向かった。
「こんなに並んでるのに入るのか?」
入口には、チケットを求める人で溢れかえっている。
「そうですよ。カップルはこの待ち時間だって楽しめるんですから」
と……思う。
さほど経験があるわけじゃないから、勝手な妄想だけど。
渋々列に並んだ彼は、ちょっと不機嫌だ。
「だったら楠さん、デートはどこに行ってたんですか?」
プラネタリウムって、結構王道だと思うんだけど……。
「そうだな。ホテルだな」
「あらま、最低。絶対モテなかったでしょ」
「いや、モテたけど」
そりゃ、その容姿ならそうかもしれないけど……それでは恋愛とは言えない。
「かわいそうに。本当の愛を知らないんですね」
「お前は知ってるような言い方だな」
「そ、そうですよ。もちろんです」