冷たい上司の温め方

私の提案で、ブラネタリウムへ向かった。


「こんなに並んでるのに入るのか?」


入口には、チケットを求める人で溢れかえっている。


「そうですよ。カップルはこの待ち時間だって楽しめるんですから」


と……思う。
さほど経験があるわけじゃないから、勝手な妄想だけど。

渋々列に並んだ彼は、ちょっと不機嫌だ。


「だったら楠さん、デートはどこに行ってたんですか?」


プラネタリウムって、結構王道だと思うんだけど……。


「そうだな。ホテルだな」

「あらま、最低。絶対モテなかったでしょ」

「いや、モテたけど」


そりゃ、その容姿ならそうかもしれないけど……それでは恋愛とは言えない。


「かわいそうに。本当の愛を知らないんですね」

「お前は知ってるような言い方だな」

「そ、そうですよ。もちろんです」

< 254 / 457 >

この作品をシェア

pagetop