冷たい上司の温め方
プラネタリウムの間、隣の楠さんは真剣に夜空を見上げていた。
もちろん、私も。
以前、彼氏と来たこともあったけど、ヤツは私の隣でぐっすり眠っていた。
もともと、価値観の合わないオトコだったのかもしれない。
「どうでしたか?」
上演が終わって外に出ると、まぶしそうな顔をした楠さんに尋ねる。
「あぁ」
『あぁ』という感想は、彼らしくて笑える。
多分……感動してくれたはずだ。
嫌味な一言がないから。
私は……星を見ながら、ずっと考えていた。
彼に愛を教えるなんてどうしたらいいのだろう。
いや待てよ?
そもそも、楠さんが私の言うことに耳を傾けたりする?
色々考えたけど、面倒だ。
とにかく楠さんが笑ってくれればそれでいい。
まぁ、そう思うのも、ひとつの愛、かな。