冷たい上司の温め方
ベンチに座ると、少し離れて座った楠さんは、コーラのふたを開ける。
「で、ここはお前のお気に入りの場所ってやつか?」
「いえ。特に」
「ゴホッ」
コーラを噴き出しそうになった彼は、口を押さえ、怪訝な目で私を見る。
「自信満々に連れてきたくせして」
「いいじゃないですか。楠さん、どうせ暇なんでしょ?」
オレンジジュースの炭酸が、想像以上に強い。
「暇じゃねぇ。お前が暇そうだから、誘ってやったんだ」
「またー」
「はぁ」と盛大な溜息をついているくせに、楠さんの目が笑っている。
「楠さん、お休みはいつもなにしてるんですか?」
「仕事だな」
彼は再びコーラを口にした。
「はぁ? そりゃーモテないわ」
予想通りの答えだった。
でも、休みの日は休めばいいのに。