冷たい上司の温め方

「仕事してないヤツもモテないみたいだけどな」

「悪かったですね」


不貞腐れたふりをしてみたものの、休みはいつも寝て終わっていた私にとって、とても楽しい時間だ。


「モテない者同士、また遊びませんか?」


こんな提案、即却下だと思ったけれど……。


「モテないわけじゃないが……遊んでやってもいいぞ」


やった。

なんとなくホッとした。
彼は放っておいたら、ずっと仕事をしてそうだ。
そんなの絶対に体に良くない。


「あっちに、小川があるんですよ。
と言っても、随分前の記憶ですが……」


私は楠さんの腕を引っ張った。

嫌がる犬のように私に引きずられる楠さんは、それでもついてきた。


「あー、あった!」


この公園には一度だけ来たことがある。
学生の頃のうっすら残る記憶をたぐり寄せ、公園の奥に進むと、小川があった。


< 260 / 457 >

この作品をシェア

pagetop