冷たい上司の温め方
「楽しかったばかりじゃないですよ。
男に浮気されるわ、貢がされるわ……男運は最悪でしたし」
「お前らしいな」
「らしいって、失礼な。でも……」
私は彼の目をしっかり見つめて、口を開いた。
「私、小さな頃は、その葉が取れなかったんです。
どれだけ手を伸ばしても届かなくて、それで落ちました。
だけど……今なら取れます。だから……今からでも遅くないかな、なんて」
言いたいことがうまく言葉にできない。
だけど、もしも彼の人生がつまらないものだったと感じているのだとしたら、これから楽しくすればいい。
「そう、か」
私に取った葉を差し出した彼は立ち上がった。
「来週は、どこに行くんだ」
「楠さん?」
立ち上がって彼の顔を見つめる。
「これから楽しめばいいんだろ?」
「はい!」
彼の口元が少しだけ緩んだ気がして、思わず笑みがこぼれた。