冷たい上司の温め方
「楠さんは?」
笹川さんが尋ねると、やっと顔を上げた。
「俺は電話待ちだ。気にするな」
「それじゃあ、お先です。麻田さん、行こうか」
素直に楠さんの言うことを聞いて、食堂に向かった。
「麻田さん、絞られてるね」
「はい。もう、なんとか言ってください」
クスクス笑う笹川さんは、ざるそばを注文している。
「でも、四月に比べたら、自分で動けるようになってるよ」
「そうですか?」
そう言われると、そうかもしれない。
入社したての頃、初めての仕事に四苦八苦するのは誰しも通る道。
だから、四月よりステップアップしていて当然かもしれない。
そういえば……最近は色々なフロアに行ったときに気が付いたことを報告すると、その処理を任せられることも多くなってきた。