冷たい上司の温め方
いつ行っても残業をしている部署には、派遣社員をひとり入れるように一課に話を付けたなんてこともあった。
言われた書類のまとめだけだった最初の頃とは、仕事の質が変わってきている。
それも、あの鬼上司のおかげなのかも。
「楠さんって、ホントに冷たい顔してますよね。
首切り屋としての威厳、だけですか?」
私は公園で見た優しい顔を思い出しながら、笹川さんに尋ねた。
「そうだなー」
月見うどんを頼んだ私を席に誘った笹川さんは、割りばしを割りながら言葉を探している。
「実は、俺もよくわからないんだ。
見た目、すごく冷たい感じだから近寄りがたいけど、言っていることに筋は通っているし、なんでもかんでもダメだという訳じゃないし……。
本当は優しい人なんだよな。
それは麻田さんもわかってるだろ?」