冷たい上司の温め方
「その安物のスーツはなんとかしろ。サイズが全然合ってない。
あと、そのダサいメークも髪型も。
一応、できる女は装っておけ。
なめられたらそれで終わりだ」
なんて言った?
この男、どさくさに紛れて、人のことバカにしすぎじゃない?
「わかりました」
怒りを噛み殺してぶっきらぼうにそう言うと、素知らぬ顔をした彼はキッチンに行ってしまった。
「あ、あの……どうして私なんて雇ってくれるんですか?」
さっき転んだところを見られただけだ。
残念な姿を見られたというのに、どうして?
キッチンの楠さんに尋ねると、「お前なら三課の仕事ができると思ったからだ」
それは、どういうこと?
『三課の仕事』ってなに?
「どうも他人を放っておけない性格みたいだしな」