冷たい上司の温め方

でも……楠さんも少しは楽しんでくれたのではないだろうか。
メガネの下の目が優しいから。


結局、お弁当はすっからかんになくなった。

弁当箱を片付けていると、楠さんはレジャーシートの上に寝そべった。


「あれ、お腹がいっぱいになったら、お昼寝ですか?」

「まぁ、そうだな」


冗談のつもりだったのに、彼は本当に目を閉じた。

私を残して寝るなんてと思ったけど……隣に私がいても寝るなんて、気を許してくれているようでちょっとうれしい。


楠さんは、すぐに寝息をたてはじめた。

仕事でストレス満タンなくせに、平気な顔して……そりゃあ、疲れるだろう。


私みたいに「疲れた」とか、「干からびる」とか愚痴ればいいのに。
……という訳にもいかないか。

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