冷たい上司の温め方
眠ってしまった彼にカーデガンをかけて立ち上がり、サッカーボールを手にして、リフティングを始めた。
まったく、コツくらい教えてくれたっていいのに。
見よう見まねでやってみるものの、できても二回だ。
たまたまできた、という方が正しい。
「どうやってたのよ」
楠さんは足の甲やももを自由自在に扱って、すごく簡単そうに見えたんだけど……。
ボールを拾いに行くだけで、疲れてしまう有様だ。
「足を動かし過ぎだ」
突然話しかけてきた楠さんは、深くは眠っていなかったようだ。
彼はそれから私に指導し始めた。
「蹴るときに足首を動かすな」
楠さんの言う通りにやっているつもりだけど、ちっともできない。
「真上に蹴りたいんだから、ももは地面と平行にするんだ」
そうは言っても……。