冷たい上司の温め方

「やった!」


そのうち、三回できた私は、思わずガッツポーズをしてしまった。


「三回とか……」


楠さんがすごくおかしそうに笑うけど、うれしいものはうれしい。


「あぁ、メチャクチャ疲れた。
楠さん、なんであんなにできるんですか?」

「そんなもん、やってたからだろ」


でも、ちょっとやってたというレベルにはやはり見えなかった。


「どれくらいやってたんですか?」

「そうだな。幼稚園の時から、高校一年までだ」


高校一年? 
部活なら普通三年の夏くらいまではやる気がするんだけど……。


「高一でやめちゃったんですか?」


私の質問に、彼は小さく頷いた。


「故障、とか?」


聞いてもいいのかわからず遠慮がちに尋ねると、メガネのフレームに触れた彼は、難しい顔をする。

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