冷たい上司の温め方

楠さんの言葉を聞いて、残念に思う。
それは、私も彼との時間が楽しかったからだろう。


「そう、ですか。あの……未熟者ですが、私も頑張りますから」

「あぁ。頼んだ、ぞ」


彼はメガネを直すと、そのまま走り去った。


『うまかったよ』か。
弁当箱を片付けながら、思わずニタニタしてしまう。


次、こうして会えるのは、いつだろう。
なんだか彼のことが気になって仕方ない。

楠さんの楽しそうな笑顔を見てしまった私は、もう一度彼を笑わせたいと強く思った。


それから、楠さんが言った通り、三課はバタバタし始めた。
と言っても、楠さんと笹川さんがなにやら動いているだけで、まだ私は蚊帳の外だ。

だけど、彼らが手が回らなくなってしまった仕事を手伝うという形で、私も一応参加していた。

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