冷たい上司の温め方
それからニ週間ほどして……。


「麻田。会議室」


楠さんが私を突然呼び出した。
笹川さんは大阪に出張中で、私だけだ。


「失礼します」


楠さんに続いて会議室に入ると、窓際まで歩いて行った彼は、私の方に振り向いて話し始めた。


「今、俺と笹川が動いているのは知っているだろ?」

「はい」

「その件で、麻田にも手伝ってもらいたい」


やっと出番だ。

彼はいつものようにメガネのフレームに触れる。
そして、持っていた資料を私に差し出した。


「今度の仕事は大きなものになる。
おそらく、会社全体を揺るがすような、だ」


楠さんの声のトーンが低くて、緊張する。


「それは、大規模なリストラということでしょうか?」

「いや、ターゲットはひとりだ」

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