冷たい上司の温め方
そう言われると、そうかもしれない。
あのおばあさんも男の子も、どうにかしなくちゃと思ったら、体が勝手に動いていた。
でも、皆そうじゃないの?
「まぁ、入ればわかる。とりあえず、飲め」
彼が差し出してくれたのは、キンキンに冷えた麦茶だ。
この人、意外と気が利くらしい。
走ったせいで、喉がカラカラだったから。
本当なら、就職祝いにビールをグイッといきたいところだけど、まさかそんな訳にはいかない。
採用理由を聞いても、さっぱり理解できなかったけど、ともかく就職が決まらないというプレッシャーからは解放された。
「あー、最高!」
思わず声をあげると、楠さんが私を冷たい瞳でにらんでいる。
「す、すみません」
就職決定がうれしすぎて、羽目を外しました。
「まぁ、いい。とりあえず、内定だ。
あとはせいぜい留年せずに大学を卒業することだな」
「もちろんです。それには自信があります」
大学はそれなりに勉強してきたから、単位が足りないということはない。
あとは卒論さえ仕上がれば。
そうして私の人生の行先は決まった。