冷たい上司の温め方
資料をペラペラめくると……。
「えっ、このオジサン?」
そこには額が大きくハゲ上がった、小太りの中年男の写真が……。
近づくって……できれば近づきたくない。
常務がイケメンでダンディなオジサマだったら、やる気もでるんだけど。
「贅沢言うな」
まぁ、合コンじゃないし、これは仕事だし……と自分を慰めながら、椅子をひいて座った楠さんを見つめる。
「大きな仕事だ。今回のターゲットは、その辺の社員とは違う」
仮にも幹部なのだ。
常務の不正が明らかになれば、会社も業界も揺らぐだろう。
「イヤなら、下りてもいい」
私は首を横に振った。
私だって三課の一員だ。
飲み屋で情報を探るなんて、探偵みたいだけど、もし常務が本当に不正をしているのなら、許せない。