冷たい上司の温め方

もう一度お酌をすると、ほろ酔いの常務は、私の膝に触れてきた。

ビクッとして払いのけようとしたけれど、我慢だ。
楠さんの言った通り、この人ならベラベラしゃべりそうな気もする。


「私、洗濯機が欲しいんですよ。調子が悪くて」

「そうか。もう少し待てばいいのが出るよ。
除菌機能が優れていて、どんな洗剤を使おうが、部屋干ししても匂わないというのが売りの商品が」


当然新製品の情報はトップシークレットだから、自社製品でも、私は知らない。


「そうなんですか。いいなぁ」

「まぁ、うちの会社じゃないんだけどね」


アハハと笑う常務は、調子に乗って私の膝を撫ではじめた。

あぁぁ、気持ち悪い。
会社だったらセクハラで楠さんにクビを宣言してもらうのに。


でも……『うちの会社じゃない』というのは、それも漏らしたということだろうか。

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