冷たい上司の温め方
第5章
冷たいオトコの過去の傷
次の日、出社すると楠さんの顔が暗かった。
「おはよう、ございます」
楠さんは手元の書類から顔をあげて私に視線を向けると、眉間にシワを寄せた。
すぐに出社してきた笹川さんは、出張帰りで少し疲れているのか、いつもより覇気がない。
「笹川さん、お疲れさまです」
「麻田さん、お疲れ。
はぁ。やっぱり麻田さんの顔を見ると癒されるよ」
「またまたー。なにも出ませんよ」
笹川さんの冗談をクスクス笑うと、なんとなくいつものペースに戻ってきた。
だけど……。
「ふたりとも会議室だ」
楠さんの心なしか低い声が響いて、ドクンと心臓が跳ねる。
楠さんと笹川さんに続いて会議室に入ると、まずは楠さんが椅子に座り、向かいに笹川さんが座った。
「笹川。出張、お疲れだった」
「いえ」
笹川さんの隣に私も座ると、「早速だが」と話が始まる。