冷たい上司の温め方
「遠藤さん……」
「麻田さんじゃないの。
泣きそうな顔して、どうかしたの?」
掃除道具の点検をしていた遠藤さんは、すぐに私を部屋に入れてくれた。
「遠藤さん、私……」
なにから話していいのかわからない。
林常務のことはトップシークレットだし、たとえ遠藤さんでも話すわけにはいかない。
「どうしたの?
とにかく落ち着きましょう。お茶淹れるわね」
遠藤さんはポットからお湯を注いで、緑茶を淹れてくれた。
「すみません。お仕事の邪魔ですね」
「いいの。毎日真面目に働いてるんだから、ちょっと位サボったってバチは当たらないわよ。
それに、首切り屋本人がここにいるしね」
クスクス笑う遠藤さんは、お母さんのような温かさがある。