冷たい上司の温め方
「はい。あの……」
「元気な麻田さんが、そんな顔をしているのは、余程のことね」
『余程のこと』、なのだろうか。
私は仕事の一環として林常務の情報を探りに行っただけで、その他の感情は、仕事とは関係がない。
「あの……楠さん、どうしてあんなに仕事にのめり込むんでしょうか。
三課の仕事なんて、辛いこともいっぱいなのに、もう私、わからなくて」
仕事のためなら手段を選ばず。
彼はそういう人なのだろうか。
「そうねぇ……」
遠藤さんは自分もお茶を口にして、少し困った顔をした。
「楠君が、三課に留まってイヤな仕事を引き受けているのには、訳があるのよ」
「訳?」
遠藤さんは大きく頷いた。
「楠君のお父さん、昔、別の電機メーカーで重役してたの」
「そうなんですか?」
初耳だ。