冷たい上司の温め方
「それを内部告発したんですか?」
遠藤さんは大きく頷いた。
「当時、三番手だったその会社は、生き残りに必死だったのね。
だけど、保証期間の過ぎた不良品を自費で修理する人がドンドン増えて、楠君のお父さんは、ひどく心を痛めて……自分のクビをかけたの」
クビ……。
それはそうだ。
自社に不利益な情報を、勝手に公開したら、そういうことになるだろう。
「待ってください。それって、楠さんが高校一年の時ですか?」
「よく知ってるわね」
楠さんがサッカーをやめなければならなくなった経済的な理由というのは、お父さんの失業だったんだ。
「楠君、それから苦労してね。
両親は離婚して、楠というのは母方の苗字なの。
多分、それからね。彼が正義は勝つべきだと、強く思うようになったのは」