冷たい上司の温め方

こんなところで話すというのは、林常務の話なのだろう。


「呼び出してすまん」

「いえ」


暗くなった公園は、ちょっと不気味だ。


「今日は早かったんですね。楠さんが残業なしなんて珍しい」


普通を装ったつもりだ。
そうでなければこの重苦しい雰囲気に耐えられそうなにない。

だけど……。


「お前に話があってな」


「フー」と大きく溜息をついた楠さんはヘッドレストに頭をもたれさせた。


「笹川の言うとおりだ。林のセクハラ行為について、俺は知っていた」


突然告白をはじめた楠さんに驚いたけど、びっくりしたり腹を立てたりという時間はもう過ぎた。


「あの日、私を待っていてくれたのは、だからですか?」


楠さんは小さく頷いた。


「もー最低。あんなオヤジ、さすがに趣味じゃないです」

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