冷たい上司の温め方
楠さんの言うとおりだ。
三課は最後のカードを持っている。
「だけどお前は……駅で見かけたとき、ばあさんを助けたりチビの代わりに怪我したり……自分の就活より他の人に手を差し伸べていただろう?
いまどき、そんなやつ少ないぞ」
あの日、全部見られていたんだ……。
「あの様子を見ていたら、こいつは自分の感情より、他の人間のことを考えて動けるやつだと思った。
だから、採用した」
あの時は必死で、難しいことなんてなにも考えなかった。
というか……体が勝手に動いていた。
「それなのに、当の自分は自分の感情で動いている。最低だな」
楠さんの横顔がなんだか寂しげに見える。
「楠さんってこ難しいことばっかり考えてるんですね
私みたいにお気楽に生きたらいいのに。ケセラセラ」