冷たい上司の温め方
笹川さんは駅前の居酒屋に私を誘った。
「麻田さん、ビールでいい?」
「はい」
真向かいに座った笹川さんが、あっという間にテキパキとおつまみまで頼む姿は、仕事の行動力に通ずるものがある。
「はぁ、今週もハードだった」
「お疲れ様です」
「麻田さんも疲れただろー」
すぐに来たビールのジョッキをカチンと合わせて乾杯すると、笹川さんはゴクゴクとビールを喉に送った。
「うれしいな。麻田さんとこうして飲めるの」
笹川さんの言葉に、ニコッと笑って見せたものの、なんと答えたらいいのかわからない。
こんなに素敵な人に告白をされたというのに、困るなんて贅沢だ。
だけど……素直に「彼女にしてください」と言えない。
それはやっぱり……楠さんが気になるからだ。