冷たい上司の温め方
楠さんの言うとおり、ふたりだと食が進む。
作りすぎたかもしれないと思ったけれど、彼は全部食べてくれた。
「ごちそうさま」
私が弁当箱を片付けてしまうと「よかったのか?」と彼はぼそりとつぶやいた。
「なにが、ですか?」
「笹川だ」
私は衝撃を受けた。
楠さんにそんなこと、言われたくなんかなかった。
「どうして? どうして、そんなこと言うんですか?」
泣きそうだった。
好きな人に、他の男の心配をされるなんて。
「ひどいよ、楠さん」
別に気持ちを伝えたわけでもないのに、勝手に怒っているのはおかしいかもしれない。
だけど、やり切れない。
たまらなくなった私は、立ち上がって部屋を飛び出そうとした。
だけど……。
「待て」
「待たない」
「いいから」