冷たい上司の温め方
「離して」
小さな声でつぶやいても、彼は離してくれない。
「離して!」
今度は彼の胸を強く押すと、やっと私を解放した。
「おしかけて、ごめんなさい。もう、しませんから……」
もう涙を我慢なんてできない。
だって、こんなに悲しいんだもの。
ポロポロこぼれる涙を拭うこともせず、彼の顔を見つめる。
あなたの笑う顔が好きなのに。
笑っていてほしいのに。
「失礼します」
私はそのまま彼の部屋を飛び出した。
タマゴサンドを食べてくれた彼の隣は、とても幸せだった。
なのに……たった一言で、私の思いは葬られてしまった。
「あーあ、やっぱ男運、ないわ」
笹川さんを好きになったら、今頃楽しくデートでもしていたはずなのに。