冷たい上司の温め方
優しくしないで
「おはようございます!」
月曜は思い切り元気に出勤した。
楠さんのことだ。
私が元気がないと余計な気を遣いそうだから。
「おはよう」
先に出勤していた楠さんは、私をチラッと見ただけでいつものように表情がない。
メガネに隠れた素顔の彼は、今、なにを考えているのだろう。
私のことなんて、眼中にない、か……。
「おはようございます」
すぐに笹川さんがやってきて楠さんに小さく頭を下げた後、私にも挨拶をしてくれる。
「おはようございます」
笹川さんを好きになれたら、優しくしてもらえそうなのに。
ふと頭にそんなことがよぎったけれど、私はパソコンを立ち上げた。
今は仕事中だ。
「麻田」
「はい」
突然楠さんに呼ばれると、必要以上に心臓が高鳴る。