冷たい上司の温め方
クスッと笑ったのは遠藤さんだ。
業務日誌をつけていた彼女は手を止めて「お茶淹れようか」と言ってくれた。
「いえ。時間がなくて」
「そうなの? 残念」
丸椅子をすすめてくれた遠藤さんは、私に微笑みかけた。
「どうしたの?」
「……はい」
彼女は、私がここに来るのは困った時だとわかっているようだ。
「私も、正義を守ってもいいでしょうか」
「なにを言い出すかと思えば。当たり前じゃない」
遠藤さんは目を見開いて驚いている。
「ありがとうございます。遠藤さん」
気持ちは決まった。
私が三課の一員として……いや、楠さんのためにできることは、これしかない。
立ち上がって深々と頭を下げ、立ち去ろうとした。