冷たい上司の温め方
「いい女だねー」
その言葉といやらしい視線は、もうアウト!
十分セクハラだ。
「ありがとう、ございます」
それから早かった。
私の太ももに、手が伸びてくるのが。
ストッキング越しにも、常務のざらりとした気持ち悪い皮膚の感覚が伝わってくる。
本人はさりげないつもりなのだろう。
だけど、とんでもない。
「もうすぐ、便利な機能の付いた冷蔵庫が出るよ」
常務は少し顔を近づけ、つぶやいた。
「どんな機能ですか?」
「あらかじめ在庫を登録しておけば、外出先からスマホで確認できるんだ。
そうすれば、スーパーで余計なものを買わなくて済むだろう?」
それは便利だ。本当に欲しい。
「詳しくは言えないけど、その方法については特許の申請がされてるよ。
この商品は、群を抜いて売れると踏んでいる」
「すごいですね」
確かに、そんな機能が付いた冷蔵庫を知らない。
売れるかもしれない。
それなのに、他社に情報を漏らすなんて、なにを考えているのだろう。
もう少し踏み込んでみようと口を開いた。