冷たい上司の温め方
「確かに我が社でその研究がなされている。
特許申請も行う予定だが、まだ申請をしたわけではない」
「それじゃ!?」
楠さんは頷いた。
「常務が他社の特許申請まで知っているということは、情報を漏らした本人だということだ。
特許申請は、申請者が発表しない限り通常一年半は外部にはわからない。
つまり、申請した本人、もしくは会社の人間しか、その内容を知らないということだ」
それじゃあ、それを知っている林は、明らかにクロだ。
「おそらく申請されている方法は我が社の物に間違いないだろうが、調べてみる」
「はい」
良かった。役に立てた。
ホッとして思わず大きな溜息が出た。
それからなにを言ったらいいのかわからなくなった。
私の役目は終わった。
あとは楠さんと笹川さんが調べてくれるだろう。
私のできることは、もう……。