冷たい上司の温め方
第6章

常務をやっつけろ!


「おはようございます」


次の日は、重い体を引きずるようにして出勤した。
会社に行きたくないと思ったのは、入社以来初めてのことだ。

泣きすぎて腫れぼったい目は、保冷剤でガンガン冷やし、寝不足でできたクマはコンシーラーで隠した。


男運が悪いのは、今に始まったことじゃない。
好きな人には手が届かないけど、こんな大きな会社に入社できたんだからと、自分に言い聞かせた。


「麻田さん、おはよ」


挨拶を返してくれたのは笹川さんだ。
いつも早い楠さんは、珍しくまだ出社していないらしい。


「なんか今日、雰囲気違う?」

「メイク変えたんです」


まだ腫れの残る目元のメイクを濃くしてごまかそうとしたら、ちっともナチュラルじゃなくなってしまったのだ。


「そっか……」


その落胆ぶり、前の方がよかったと言いたげだ。

大丈夫。
私もそう思ってるから。

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