冷たい上司の温め方
やがて始業時間が過ぎても、楠さんは顔を見せなかった。
なによ。フられた女が必死に出勤してるのに、逃げるなんて。
一瞬、そう腹を立てたけど……。
「あっ、楠さん、ひとりで動きたいことがあるから、今日は人事には顔出さないかもって、電話が入ったよ」
「ひとりで?」
それって、もしかして……。
「まぁ、あの人時々そういうことあるから。
なんか嗅ぎつけたのかもな。そのうち教えてくれるさ」
笹川さんはそう言うけど、絶対に林常務の件だ。
だけど、私になにかできるとは思えない。
ソワソワしながら午前中の仕事を終えても楠さんは顔を出さない。
すごく嫌な予感がする。
私はたまらず地下へとダッシュした。
「遠藤さん!」
「あら、麻田さん」