冷たい上司の温め方

休憩室で他の仲間と弁当を広げていた遠藤さんは、必死な顔に気が付いたのかすぐに席を立った。
そして、私を伴って人気のない非常階段に向かった。


「どうしたの?」

「……はい」


お母さんのような遠藤さんの前では、辛い気持ちを吐き出して泣きたくなる。
だけど、それどころじゃない。


「遠藤さん。重役室の様子を探れるところって、ありませんか?」


トイレも考えたけど、あそこは特殊なフロアだ。
私がウロウロしていたらおかしい。


「重役室?」


目を丸くした遠藤さんは、一瞬口をつぐむ。


「楠君、ね?」

「……はい」


遠藤さんにはお見通しだ。


「秘密は守るわ。話して」


私は小さく頷いて、林常務の不正についてのすべてをぶちまけた。
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