冷たい上司の温め方
こうすることが正しいのかはわからない。
だけど、笹川さんに話したら、怒り狂うのが目に見えている。
頼れるのは遠藤さんしかいない。
「楠君、お父さんと同じことしようとしてるのね」
「はい。きっとひとりで……」
私と笹川さんを巻きこまない様に、ひとりで動いているのだ。
「私が重役フロアに行くことはできるけど……この時間は中に入るのは無理。せいぜい廊下までね。
それじゃあ中の様子までわからないわ」
遠藤さんはしばらく黙り込んでなにかを考えている。
「そうだ。
重役の秘書がいつもランチに行くカフェは知ってる。
でも……楠君、あなたにこれ以上は望んでないんじゃない?」
「私が、望むんです」
わかってる。
楠さんは私を常務に近づけたことをきっと後悔している。