冷たい上司の温め方

「私だって、正義を守りたいんです」


ホントは違う。
楠さんを、守りたいのだ。


「はぁー」


遠藤さんは大きな溜息をついた。
だけど、その表情はにこやかだった。


「楠君、やっぱり見る目あるわ。いい子を好きになったもんだ」

「えっ?」

「あっ、これ内緒ね。
本人は絶対にそうだと言わないけど、私のところに来てあなたの話ばかりするの」


そう、なの?


「しかもいつも鋭い目をしてるくせに、目尻を下げて優しい目をして。
ホント笑っちゃうくらいだったんだから。
行くわよ」


遠藤さんは私の手を取り、一階に向かう。

裏玄関から出ると、秘書がランチに行くというカフェまでの道を説明してしてくれた。


「麻田さん。私もできるだけのことはするから、あなたは余計なことは考えなくていい。
自分の思うとおりに突っ走りなさい。それがあなたの持ち味」

「ありがとう、遠藤さん」


私は走り出した。
< 368 / 457 >

この作品をシェア

pagetop