冷たい上司の温め方
「私だって、正義を守りたいんです」
ホントは違う。
楠さんを、守りたいのだ。
「はぁー」
遠藤さんは大きな溜息をついた。
だけど、その表情はにこやかだった。
「楠君、やっぱり見る目あるわ。いい子を好きになったもんだ」
「えっ?」
「あっ、これ内緒ね。
本人は絶対にそうだと言わないけど、私のところに来てあなたの話ばかりするの」
そう、なの?
「しかもいつも鋭い目をしてるくせに、目尻を下げて優しい目をして。
ホント笑っちゃうくらいだったんだから。
行くわよ」
遠藤さんは私の手を取り、一階に向かう。
裏玄関から出ると、秘書がランチに行くというカフェまでの道を説明してしてくれた。
「麻田さん。私もできるだけのことはするから、あなたは余計なことは考えなくていい。
自分の思うとおりに突っ走りなさい。それがあなたの持ち味」
「ありがとう、遠藤さん」
私は走り出した。