冷たい上司の温め方
慌ててランチを頼むと、スマホを見るフリをして耳を彼女たちの方に向けた。
「竹中さん、いらだってたね」
林常務の秘書だ。
「だって、常務つかまってるみたいじゃん」
「誰に?」
「誰って。首切り屋よ」
やっぱり……楠さんは重役室だ。
「首切り屋って、常務の首を?」
「そう。だって胡散臭かったじゃない、林」
彼女達も一歩会社を出れば普通の女だ。
普段は秘書なんて澄ました顔しているけれど、ただの噂好きの女の様だ。
「噂だと、同業他社の女に入れあげて、情報漏らしてるらしいわよ。
どこの会社かまではわかんないけど」
女、絡みだったのか。
あの常務がモテるようには思えないし、いいように利用されているのだろう。