冷たい上司の温め方

「へぇ。それを首切り屋に嗅ぎつけられたってわけか。
だけど、常務くらいの立場の人に向かっていくのって……」

「一社員の戯言なんて、もみ消されるでしょ。
なんていったって、竹中さんがそんなこと許さないわよ」


楠さんが言っていた通り、秘書の竹中が曲者かもしれない。


「おまたせしました」

「あっ……ごめんなさい」


悠長にランチを楽しんでいる場合ではない。
もったいないのは承知の上だったけど、お金を払ってすぐにカフェを出た。

美味しそうなミックスフライだったのに。

話に夢中な秘書達は、飛び出した私のことなんて眼中にない。


楠さんが重役室にいることは確定した。
だけど、私になにができるのかと考えて、唖然とする。

気ばかりが先走って、自分の能力のなさを忘れていた。
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