冷たい上司の温め方

「これ……」

「さっきファイルを片付けたら、下から出てきて……。楠さんの字だよな」


間違いない。
走り書きだけど、几帳面な彼らしく字の大きさが整っている。


「笹川さん、あの……」

「麻田さん!」


その時、遠藤さんが血相を変えてやって来た。
珍しく慌てた様子だ。


「重役フロアでエレベーターを降りたらすぐに止められたの。
今は廊下にも入れてもらえないって。こんなこと初めてよ。
それで、どう、だったの?」

「なんの話ですか?」


私達のいつもとは違う様子に気が付いた笹川さんが、不思議そうな顔をする。


「秘書の話だと、楠さんが重役室に乗り込んだのは間違いないようです」


私と遠藤さんの会話を聞いて、察しのいい笹川さんは気が付いたようだ。

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