冷たい上司の温め方
「人事三課の笹川です。林常務にお会いしたい」
遠藤さんが行った通り、秘書のひとりが私達を止める。
だけど、笹川さんは制止を振り切って足を止めない。
こうして突き進む笹川さんは、楠さんと同じように覚悟ができているのだろう。
「すみませんが、常務はただ今会議中です。
アポイントをお取りください」
交代で昼休みを取っているのだろう。
追いかけてきた秘書が、私達の前に立ちはだかった。
常務の秘書の竹中はどこだろう。
「楠と、ですよね。私達も同席させていただきます」
「勝手に、困ります」
流石笹川さんだ。
数ある部屋の中から迷うことなく林常務の部屋のドアに手をかけた。
「失礼します」
ノックの後、返事も待たずにドアを開けて乗り込むと、「なんだ君達は」と竹中が飛んでくる。