冷たい上司の温め方
「遠藤さん、ありがとうございました」
地下の休憩室で他の数人と何事もなかったかのように談笑していた遠藤さんは、私達の登場に驚いた様子だった。
「あら、いい男といい女がそろってなによ」
笑いながらも近づいてきた遠藤さんは、私達を促して部屋の外に出た。
「お疲れ様。首切り屋さん」
「遠藤さんには本当に助けられました。
なにも考えずに新聞社を呼んだりして、浅はかでした」
楠さんが首を垂れると、遠藤さんは首を振った。
「ううん。懐かしいわ。あなたのお父さんのことを思い出しちゃった。
正義感が強いところがそっくりね」
そういえば楠さんのお父さんは、今なにをしているのだろう。
「俺は父を許せませんでした。
俺からサッカーの夢を取り上げ、母を泣かせて……。
俺を育てるために働きづめだった母は、力尽きる様に亡くなってしまいました」