冷たい上司の温め方

ためらいなく入ってきた舌が私の口内でうごめく。
私はただ、情熱的なキスに溺れていく。

やがて私を解放した彼は、壁に手をついて私を見下ろす。


「美帆乃」

「……はい」

「愛してる」


スーッと頬に涙が伝った。
この言葉がどれだけ欲しかったか。


「楠さん、大好き、です」


彼の腰に手を回してしがみつくと、骨が砕けそうなほど強い力で抱き寄せてくれた。


「苦労させるかもしれない」

「うん」

「それでも、絶対に不幸にはしない」

「……うん」


きっとお父さんのことがあるから、並大抵の決意ではないはずだ。

だけど、だからといって眉間にシワを寄せている彼は見たくない。
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