冷たい上司の温め方
「楠さん、お願い」
彼に体を預けて少し速い鼓動を聞いていると、幸せすぎて涙がこぼれる。
「ん?」
「笑って……。私と一緒に、ずっとずっと笑っていて?」
カチコチに凍った彼の心がようやく溶け始めたのだ。
これから困難なことが私達を待っているだろう。
それでも、もう凍えるような冷たい心には戻ってほしくない。
「あぁ。美帆乃が隣にいてくれれば、大丈夫、だ」
ゆっくり私を離した彼は、再び優しいキスを落とした。
手をつないだままリビングに向かう。
彼の手がこんなに大きかったなんて知らなかった。
「冷やさなくちゃ」
「悪いな」
氷水とタオルを持ってきた私は、彼の左側に座る。
そして、頬に冷たいタオルを当てると、彼は自分でそれを持った。