冷たい上司の温め方

焦るように私のブラウスのボタンを外した彼は、唇をつないだまま自分もシャツを脱ぎ捨てる。
暗闇に慣れてきた目が、意外なほどに鍛えられた彼の体を捉える。

すぐにブラの肩紐が払われ……彼の大きな手が私の胸に触れた。


「あっ……」


まさか、あの時私を拾ってくれた彼と、こんな関係になるなんて考えてもみなかった。

彼の長い指が、私の体を隅々まで堪能する。


「んっ、アァ……ン……」


私の手をシーツに縫いとめ、容赦なく愛撫を繰り返す彼は、たまらず悶える私を楽しんでいるかのようだ。
もう、声にならない甘い溜息がどうしても我慢できない。


「美帆乃」


そして、時折私の名を口にする彼を見て、胸がいっぱいになる。

この人をどうしたら笑顔にできるかと、ずっと考えてきた。
だけど、もう大丈夫だ。

彼は過去を乗り越えた。
そして、これからはずっと私も隣で笑っているから。
< 410 / 457 >

この作品をシェア

pagetop