冷たい上司の温め方
「知らなかった」
「なに、が?」
「ジャジャ馬にこんなに色気があること」
「バカ」
クスッと笑った彼は、再び唇を重ねた。
ここに初めて来たのは、膝から血を流した子供みたいな私だった。
色気がないと言われても、反論の余地もない。
だけど、彼の前だけでは、女でいたい。
その晩は、彼の腕の中で眠った。
それはそれは、幸せなひとときだった。
ずっと男運がないと嘆いてきたけど、極上のオトコに愛されて幸せだ。
いや、待てよ?
仕事を失うかもしれない人に惚れたというのは、やっぱり男運がない?
そんな葛藤をしたものの、答えは決まっている。
仕事はどうにでもなる。
だけど、楠さんはこの世にたったひとりだ。