冷たい上司の温め方
この人、こんなに甘い人なんだ。
ドキドキする胸に思わず手を当てると、彼はおかしそうに笑った。
ふと時計を見ると、まだ六時前だ。
もしかしたら、眠れなかったのかもしれない。
「朝食、作りましょうか?」
楠さん、朝はなにを食べるのだろう。
「いや、今日はいい。また頼む」
私も今日は喉を通りそうにない。
おそらく今日出社すると、私達の運命が決まる。
「コーヒー、飲むか?」
「はい。私、自分で淹れます」
キッチンのコーヒーメーカーに近づくと、新聞が置かれているのに気が付いた。
「これ……」
新聞を手に彼を見つめると、小さく頷く。
一面は、政治家の選挙違反について大きく取り上げられていたけれど……。
裏一面を開くと、一瞬呼吸が止まった。