冷たい上司の温め方
「だけど、すぐに嗅ぎ付けられる」
「はい」
昨日、他にも新聞社を呼んでいる。
まだ記事になっていなくても、誰かが内部告発をしたことは、もう世に知れている。
「楠さん」
彼の腕に触れながら、口を開く。
「ずっと一緒にいていいですか?」
自分でもこんなに落ち着いているのが不思議だ。
だけど、激しい濁流に飲み込まれたとしても、彼と手をつないでいさえすれば、大丈夫だと思えるのだ。
腕の力を緩めた彼は、私を自分の方に向かせると、真っ直ぐに見つめる。
「離さないって、言っただろう?」
ゆっくり重なった唇は、今までで一番温かかった。