冷たい上司の温め方
「だが、ちょっと過大評価しすぎだったぞ。
配置換えだけで業績がアップしたわけじゃない」
「そこはいいじゃないですか。
プレゼンテーションは効果的に。
大切な主張は一発で反論できない印象を与えることが重要だと、楠さんを見ていて学んだんですけどね」
クククと笑う笹川さんは、「仕事に戻ります」と会議室を出て行こうとする。
「あー、言い忘れた。
麻田さん。朝、楠さんが会社に入るに手間取ったのは、バレちゃったからなんだ」
「バレた?」
私が首を傾げると、笹川さんが再び口を開く。
「楠さんが内部告発した張本人だって」
「えっ!」
菅原さんが伏せたくれたはずなのに。
会社に残れると決まったものの、それじゃあ、楠さんはこれからマスコミに追いかけられるの?
「大丈夫だよ。だって楠さん……」
「笹川、もういい」