冷たい上司の温め方

なんだか焦っている楠さんを見て、笹川さんがニヤリと笑った。


「『不正を正してなにがいけないんですか?』だってさ。マスコミもなにも言えなかったよ」


すごすぎる。
あんなに大勢のマスコミを前に、そんなセリフ、普通なら言えない。

やっぱりこの人、正義のヒーローだ。


「あー、もう負け負け。
こんな人と女の子を取り合っても、勝てる気がしない」


茶化すように笑う笹川さんはドアノブに手をかけた。


「あっ、一回くらいは目をつぶりますよ」

「なにをだ?」


楠さんはちょっと不機嫌だ。


「キス。それじゃ」


バタンと閉まったドアを唖然と見つめたあと、おかしくなって思わず吹き出してしまった。


「まったく、アイツは」


楠さんは呆れたような声を出すものの、目は笑っている。
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