冷たい上司の温め方
「後で菅原さんにもお礼をしないと」
「あっ、朝、助けていただきました」
楠さんは大きく頷くと、再び口を開く。
「実は菅原さんも手を回してくれたんだ」
「どういうことですか?」
「俺をクビにするなら、内部告発者を見殺しにした会社という記事を書きますってさ」
驚いた。
それって、ちょっとした脅しだと思うけど。
「菅原さん、親父を守れなかった罪滅ぼしだって」
楠さんの顔が少しゆがんだ。
今までの辛かったことが頭によぎったのかもしれない。
「楠さん」
「ん?」
「私達、すごく幸せですね」
その言葉に彼は笑顔を取り戻す。
楠さんは辛い経験をしたかもしれない。
だからずっと心を閉ざしてきたのかもしれない。
でも……だからこそ守りたい正義があり、それに賛同してくれる素敵な人達がいて……。