冷たい上司の温め方
「麻田」
「すみま、せん……」
しおらしく謝る彼女は、少し天然だ。
自分ではまるで自覚がないようだけど。
「で?」
「はい。松木さん、どうやら学生の頃に痛めた腰が、悪化しているようです。
腰椎分離していて、ブロック注射などの治療をしているようです」
腰椎分離……か。
あれはかなり痛みが出るらしい。
「それで、思い切って手術を考えているようなんです。
ですが、しばらく入院になるので、仕事に支障が出るからと、迷っているようで」
そう言いながら美帆乃がファイルから取り出し、俺に差し出した書類には、松木の営業成績が記されている。
このタイミングでこの資料。
あらかじめ調べてあったようだ。
なかなか、わかるようになってきたな。
営業成績は申し分ない。
長期休暇を認めてやれと、言っているのだろう。